第1回:映像ディレクター小松原茂幸がみた『天気の子』

 

映像ディレクターがみた『天気の子』
小松原茂幸(映像ディレクター)
こんな日は映画館に限る

首都圏に甚大な被害をもたらした台風が去った思ったら、この暴力的な酷暑。気象庁的には「危険な暑さ」らしい。特に緑の全くないアスファルト砂漠・六本木の熱さはおかしい。危険を回避するにはどこへ?となると、こんな日は映画館に限る。海外に出た際は大抵現地の映画館に足を運ぶことにしていて、インドでもフィリピンでもタイなんかでも、気怠い気候の土地の劇場内では大体クーラーがガンガンに(時に、これまた暴力的なほど)効いていて、2時間ばかし快適に過ごせるもんである。

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天気の子』
主人公はなんと天気を操ることが出来るらしい。この季節に正にうってつけの映画が出てきた。監督は前作「君の名は」にて歴代邦画興行収入いきなり2位に躍り出た新海誠氏。たまに一聴しただけで瞬時に誰かがわかる音楽家が存在するように、(個人的にはレイ・ハラカミ氏とか)新海さんの映画も冒頭1分で判別できるくらいの強烈な作家性を炸裂させてくる。あのモノローグである。

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正直、アラフォーに片足を突っ込んだこの年になると、ティーンエイジャーの少年少女モラトリアムや惚れた腫れたなんて話には、なかなか興味を持続しづらいものがある。前作では少年と少女の身体が入れ替わり、あれ?この映画って大林宣彦の「転校生」的な話だっけ?と、少女の体を手にいれた少年がやたらと自分の胸を揉む(ちなみに今回も「エロといえば胸」と言わんばかりの天丼をかましてくれる。なんなんだろ。性癖が同じなんだろうなー僕と。)展開を延々と見せられていたら、突如監督の想像力を爆発させ一気にストーリーを展開させてくれた驚きがあった。

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それが今回では、少年の謎の(結局本編では最後まで語られなかったが、10代特有の極私的な悩み…ってのがあるんだよね。多分。)家出から始まり、天気を操る少女と偶然出会い、その「天気を操る」の一点突破でストーリーを進行させたところには、前作の期待値があった故、物足りなさを感じたことは否めない。そして今回も「自分が好きな相手は、相手も自分のことを無条件に好いている」これ以上ないハッピーな展開が続き、ある重大な問題が勃発した時に流れてきたのが、ご存知紅白出場国民的アーティストRADWIMPSのこのフレーズである。

「愛にできることは まだあるかい?」

劇場を出ると、そこは変わらず深夜の亜熱帯。だが夏ももう終わる。熱狂もね。

 

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『天気の子』
原作・脚本・監督:新海誠
音楽:RADWIMPS
声の出演:醍醐虎汰朗 森七菜
配給:東宝
©2019「天気の子」製作委員会

公式サイト:https://tenkinoko.com/

 

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