ムービーマービー 編集部が振り返る第92回アカデミー賞授賞式!!

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本日、第92回アカデミー賞授賞式が行われた。結果をご存知の方は多いだろうが、『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を含む4つの賞を受賞した。外国語映画が作品賞を受賞するのは92回のアカデミー賞の歴史で初めてのことだ。そんな歴史的な記録が生まれた第92回アカデミー賞をムービーマービー 編集部が振り返っていきたいと思う。

★作品賞候補9本のうち8本がオスカーを受賞
今回、作品賞には9本の作品がノミネートされたが、そのうち8本がいずれかの部門でオスカーを手にした。作品賞候補作品の受賞数の内訳は下記の通り。

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『パラサイト 半地下の家族』4つ ※最多受賞

作品賞
監督賞(ポン・ジュノ)
脚本賞(ポン・ジュノ、ハン・ジヌォン)
国際長編映画賞


1917
『1917 命をかけた伝令』3つ 
撮影賞(ロジャー・ディーキンス)
録音賞
視覚効果賞

once upon a time in hollywood
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』2つ
助演男優賞(ブラッド・ピット)
美術賞

ford vs ferrari
『フォード vs フェラーリ』2つ
編集賞
音響編集賞

JOKER
『ジョーカー』2つ
主演男優賞(ホアキン・フェニックス)
作曲賞(ヒドゥル・グドナドッティル)

jojo rabbit
『ジョジョ・ラビット』1つ
脚色賞(タイカ・ワイティティ)

Marriage-Story
『マリッジ・ストーリー』1つ
助演女優賞(ローラ・ダーン)

Little Women
『ストーリー・オブ・マイライフ わたしたちの若草物語』1つ
衣装デザイン賞(ジャクリーン・デュラン)

唯一、『アイリッシュマン』のみ受賞が0になってしまった。10以上のノミネートを受けながら受賞0に終わったのは第86回の『アメリカン・ハッスル』以来である。1つの作品がズバ抜けてオスカーを受賞するのではなく、より多くの作品がオスカーを受賞した印象だ。

受賞結果に関していえば概ね順当だったと言える気がする。演技の部門では4人中3人が初受賞。しかし、今年は初ノミネート初受賞というのは1人もいなかった。受賞した俳優の顔ぶれを見れば分かるが、全員が映画業界に多大な貢献をしてきた人物であり、その努力がようやく報われた形になった。

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ホアキン・フェニックスは、かつてはリヴァー・フェニックスの弟という印象が強かったが、今ではハリウッド屈指の演技派俳優に。『ジョーカー』の演技はその集大成とも言えるべき演技だった。作品の中身は全く違うものの、ジョーカーを演じてオスカーを受賞した俳優はヒース・レジャーに続き2人目。同じキャラクターを違う俳優が演じてその両者がオスカーを受賞した例は『ゴッドファーザー』シリーズでヴィトー・コルレオーネを演じたマーロン・ブランドとロバート・デ・ニーロ以来だ。

ブラッド・ピットはプロデューサーとしてはオスカーを受賞しているものの、俳優として手にするのは初めて。相変わらずカッコいい。彼ほどの俳優が今まで一度もその演技でオスカーを受賞していなかったという事実はやはり驚きだが、今回ようやくオスカーを手にすることができた。世界中のファンは大いに喜んでいることだろう。

個人的にもっとも印象的だったのはローラ・ダーンの受賞だ。ブルース・ダーン、ダイアン・ラッドという名優の間に生まれた彼女はその両親に感謝を捧げるスピーチを披露。涙を流して喜んでいたダイアン・ラッドの姿が非常に感動的だ。ちなみにNetflix作品で初の演技賞受賞者となった。

主演女優賞はこれが2度目のオスカーとなったレネー・ゼルウィガー。前回受賞以降沈み気味だった彼女のキャリアだったが、対象作でジュディ・ガーランドを演じて見事にトップの座に返り咲いて見せた。作品の評価は確かにそこまで高くなかったかもしれないが、やはりジュディ・ガーランドがオスカーを手にしたという事実は私としては非常に嬉しい出来事だ。

ちなみに脚本部門・技術部門・美術部門は『アイリッシュマン』以外の作品がバランスよく分け合った結果に。技術部門を圧倒するかと思われた『1917 命をかけた伝令』だが、編集賞と音響効果賞は『フォード vs フェラーリ』が受賞した。

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ちなみに日本人ではメイキャップ&ヘアスタイリング賞を『スキャンダル』のカズ・ヒロ(辻一弘)が受賞。『ウィンストン・チャーチル』に続いての受賞となった。ただし彼はすでにアメリカ国籍を取得したアメリカ人だ。

★受賞結果以外の出来事を振り返る
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授賞式以外で印象的だったのはやはりオープニングではないだろうか。ジャネール・モネイが今回アカデミー賞にノミネートされた作品を讃えるパフォーマンスを披露。今回のアカデミー賞では黒人俳優の候補が少ないなどと言われていたが、オープニングにジャネール・モネイとバックダンサーに黒人を多く配置した。そういう狙いがあったのかは不明だが、オープニングとしては非常に華やかなパフォーマンスであったと思う。昨年のQUEENと比較されると辛いかもしれないが。

また先日行われたグラミー賞でも活躍したビリー・アイリッシュが登場。昨年亡くなった映画人を偲ぶ「In Memoriam」に登場しビートルズの「イエスタデイ」を歌いながら、スクリーンには故人が映し出された。つい先日亡くなったばかりのカーク・ダグラスも登場。また、日本人では京マチ子さんも映し出された。

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日本人でいうならば『アナと雪の女王2』の主題歌パフォーマンスに松たか子が登場。世界中のエルサ吹き替え女優たちとともに主題歌「Into the Unknown」を歌った。日本人がこうしてアカデミー賞の舞台でパフォーマンスを披露するのは非常に喜ばしい出来事と言えるだろう。

★『パラサイト 半地下の家族』が奇跡を起こす!!

授賞式の終盤で2つのビッグサプライズ。監督賞は下馬評ではサム・メンデスが有利かと思われていたが、受賞したのはポン・ジュノ。アジア映画の監督としては初の受賞となる快挙だ。これまでアジア映画の監督でノミネートされたのは黒澤明、勅使河原宏、アン・リー(後にアメリカ映画で受賞)のみだったが、いずれも受賞には至らなかった。受賞スピーチではスコセッシやタランティーノ、トッド・フィリップスやメンデスに敬意を表すスピーチを披露。「オスカー像を5つに分割して全員で分けたい。」と話し、喝采を浴びた。

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そして作品賞。再び奇跡が起こる。なんと『パラサイト 半地下の家族』が受賞を果たしたのだ。アメリカ映画・イギリス映画しか受賞作が出なかった中でそれ以外の国の作品が受賞するのは初の出来事。外国語映画での受賞も初の出来事だ。オスカーの歴史が変わった瞬間である。場内は大喝采に沸いている。それはつまり、どこの国の映画かは関係なく、『パラサイト 半地下の家族』が純粋に“映画”として愛された証拠なのだろう。アカデミー賞の歴史を変えたのはフランス映画でも、イタリア映画でも、ドイツ映画でも、スペイン映画でも、日本映画でも、中国映画でもなく、韓国映画だった。なおパルム・ドールを受賞した作品が作品賞を受賞するのは第28回の『マーティ』以来、実に64年ぶりだ。

同じく昨年パルム・ドールを受賞した『万引き家族』は外国語映画賞(現、国際長編映画賞)しかノミネートされなかったのに対し、『パラサイト 半地下の家族』作品賞を受賞し、しかも最多受賞を果たした。同じ“貧困”をテーマにした作品であるはずなのに、何が違ったのか。ポン・ジュノに限らずパク・チャヌクやキム・ギドクが国際映画祭やハリウッドで活躍するようになった一方で、日本の映画監督は是枝監督以外はどうだろうか?そればかりか、カズ・ヒロのような才能ある人材がどんどん海外に出て行っている。この現状を日本映画は真剣に考えていかなければいけないだろう。

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★最後に
この1年間、この日のためにいろんな作品や人の情報を集めて予想をしてきたが、毎年授賞式当日になると結果が気になって、正直仕事が全く手につかない(ごめんなさい・・・)。筆者はアカデミー賞の予想を始めて10年になるが、授賞式が終わると「あぁ1年間が終わったなぁ」という気持ちと「ここから新しい1年が始まる」という気持ちになる。世界にはたくさんの映画祭や賞があるが、世界中の映画ファンがこれだけ注目するイベントはこの「アカデミー賞」だけだ。特に今回は外国語映画が作品賞を受賞するという歴史的な年になった。歴史が変わる瞬間を目撃できたことを一人の映画ファンとして非常に嬉しく思う。

さて、1年後に迫った第93回アカデミー賞にはどんな作品が、どんな俳優がノミネートされるのだろうか。今から1年後が楽しみ過ぎて仕事が手につきません!

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