『i-新聞記者ドキュメント-』公開記念「常識を打ち破る映画会社スターサンズ」特集 ② 『息もできない』(2009)


『i-新聞記者ドキュメント-』公開記念
「常識を打ち破る映画会社スターサンズ」特集 ②
『息もできない』(2009)
韓国映画界の常識を打ち破った衝撃作

スターサンズは「宮本から君へ」、「新聞記者」などこれまでにないタイプの邦画を世に送り出しているが、その一方で良質な外国映画の配給も行っている。中にはアカデミー賞外国語映画賞(現在は「国際長編映画賞」)を受賞した作品もあるが、その中でもひと際異彩を放っているのが本作「息もできない」だ。

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本作は韓国のインディーズ映画であるが、異例の大ヒットを記録。ロッテルダム国際映画祭を始めとした世界の映画祭でも高く評価され、第10回東京フィルメックスでは史上初となる最優秀作品賞と観客賞のW受賞を果たした。原題の「トンパリ」は韓国語では「クソバエ」という罵倒語を意味する言葉だが、社会の底辺で生きる男と、心に傷を負った女子高生の物語は多くの人の胸を打った。

本作で常識を打ち破ったのは監督であるヤン・イクチュンではないだろうか。監督の他に脚本、製作、編集、主演という5役を一人で勤め上げた彼は、本作が監督デビュー作。しかし、そうとは思えない程の力強い演出を魅せてくれた。途中で制作費が無くなってしまい、彼の家族や友人から資金援助を受けたり、家を引き払ってその保証金を製作費に充てるなど、普通では考えられない方法で映画の資金を調達した。それだけ本作に対して相当強い想いがあったのだろう。上記の通り本作は韓国でインディーズ映画では考えられないような大ヒットを記録した。そう言った意味では、この映画そのものが韓国映画界の常識を打ち破った作品と言えるだろう。

今年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」もまた社会の底辺に生きる家族の物語だが、韓国映画にはこうした「社会の底辺に生きる人間の物語」を描いた映画は多い。

 本作「息もできない」もその一つだ。実際に韓国社会では経済格差が大きな問題になっている。韓国には5つの財閥と呼ばれる大きなグループがあるが、そう言ったお金を持っている人間はどんどん裕福になり、そうでない人間はどんどん追い込まれていく。本作はそう言った搾取される側の人間がいることへの問題提起を優れた物語の中に込めているのだろう。だからこそ本作は「観なければいけない映画」なのだ。

 ここ最近は日本と韓国は外交的に非常に緊迫した関係にあるが、韓流アイドルのコンサートが日本で行われればチケットは完売する。先日行われたTIFFCOM(東京国際映画祭併設の映像マーケット)にも韓国から多くのバイヤーやセラーが来日した。文化的な面では強い繋がりがある日本と韓国。よくよく考えればスターサンズ製作の「新聞記者」の主人公を演じたシム・ウンギョンも韓国人女優だ。スターサンズは映画を通じて日本と韓国の架け橋になってくれている。

 

【あらすじ】
母と妹の死の原因を作った父親に対して強い憎しみを持っている借金取りのサンフン(ヤン・イクチュン)は、ある日、女子高生のヨニ(キム・コッピ)と知り合う。サンフンは、強権的な父親や暴力的な弟との関係に悩むヨニに惹(ひ)かれ、それぞれの境遇から逃避するかのように何度も一緒に過ごすうちに、互いの心に変化が訪れる。

【キャスト】
ヤン・イクチュン、キム・コッピ ほか

【スタッフ】
監督、脚本、製作、編集、主演:ヤン・イクチュン

 

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【特集:常識を打ち破る映画会社スターサンズ ①】
『新聞記者』(2019)メディアのタブーを破る意欲作
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【特集:常識を打ち破る映画会社スターサンズ ③】
『あゝ、荒野』(2017)合計5時間超!上映時間の常識を破る、人生に一番近い映画
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