ダニー・ボイル作品特集③『スラムドッグ$ミリオネア』

 

ダニー・ボイル作品特集③

いよいよ今週末に公開が迫った映画『イエスタデイ』。世界中の人々が伝説のバンド“ザ・ビートルズ”を忘れた世界で、そのザ・ビートルズの楽曲で人気を獲得していく歌手の物語だ。そんな『イエスタデイ』を手掛けたのはイギリスが誇る名監督ダニー・ボイルだ。今週の「今夜何観る?」コーナーでは、そんなダニー・ボイル監督作品をご紹介!

『スラムドッグ$ミリオネア』(2008年)

●どんな辛い過去にも未来に繋がる希望がある

一世を風靡したクイズ番組「クイズ$ミリオネア」を覚えている日本人は今も多いのではないか。元々はイギリスの番組なのだが、世界中で製作されている人気番組だ。回答者と司会者の一対一のクイズ対決。全問正解すれば1000万円貰えるという夢のある番組であった。また日本版では司会者みのもんたによる正解発表までの独特の溜めが、通称“みの溜め”は日本版だけに見られるものだ。ちなみにこれは本国イギリスのプロデューサーからも大変好評で、本国の番組でも紹介された程だ。

本題に入ろう。ダニー・ボイルが本作の舞台に選んだのは“インド”。低予算の、インドが舞台にこの映画は、第81回アカデミー賞で作品賞を始め8部門受賞する。ボイル自身も監督賞を受賞し、遂にアカデミー賞の歴史にダニー・ボイルの名を刻むことになった。

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【ストーリー】
テレビ番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、賞金を獲得したジャマール(デヴ・パテル)だったが、インドのスラム街で育った少年が正解を知るはずがないと不正を疑われ逮捕される。ジャマールになぜこれほどの知識があり、この番組に出演するに至ったのか。警察の尋問によって、真実が明らかになっていく。

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一見すると貧しい少年がクイズで大金を勝ち取るまでを描くサクセスストーリーに見えるが本作はそんな単純な映画ではない。ジャマールのバックボーンにはインド社会が抱える様々な問題が内包されている所がポイントだ。格差社会や急激な近代化など多くの社会問題をジャマールを通して見ることが出来る。

特に2000年代半ばからインドは高度成長期に入りいわゆる中間層と言われる人口は2億4000万人と経済的に豊かな人が増加したが、一方、1日65ルピー未満で暮らす貧困人口は3億人を超える。急激な経済成長は、一方で大きな格差を生み出してしまった。

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この映画が多くの観客の心を掴んだ背景には、この映画が製作された2008年に起こったリーマン・ショックの影響もあるように思える。この金融危機は世界中に大打撃を与え、もちろん映画界にも大きな影響を与えた。人々が終わりの見えない危機に不安を抱きながら生活していたときに、貧困の中でも希望を捨てずに生きてきた少年の映画が大いに受け入れられたのは想像に難くない。

少年のバックボーンはインド社会の問題を描いていると前述したが、それだけではない。どんなに惨めで辛い過去でも必ず未来に繋がるヒントがあるということを描きたかったのだろう。本作の主人公がそうであるように、どんな状況でも全力で生きていれば、人生はいつか必ずそれに応えてくれるのである。

 

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『スラムドッグ$ミリオネア』(2008年)
監督:ダニー・ボイル
キャスト:デヴ・パテル、マドゥル・ミッタル、フリーダ・ピント ほか

 

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